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美術・文化社会批評/アライ=ヒロユキのブログ


アライ=ヒロユキの美術・文化社会批評などの日々の活動を伝えます。
by PXP14154
美術・文化社会批評(ライター、講演)などの活動を展開しています。
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最近の寄稿原稿6本:ホンマタカシ展ほか

最近の寄稿原稿。

『週刊金曜日』4/29号に「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」展(東京オペラシティアートギャラリー)の展評寄稿。「人間」を「個性」で写し取るという写真観念の対極として、作家は現代アートの方法論を援用。「不在」を用いて現実をあぶり出す手法は、近代合理主義への懐疑が生んだ高松次郎の「影」の絵画との類似性も。

『インパクション』179号に、枝川朝鮮学校で開催の「YAKINIKUーアーティスト・アクションin枝川」(昨年12月開催)の展評掲載。現在のアートプロジェクトの公共性を俯瞰するとともに、既存の展覧会にはない同展の価値を分析。「批判精神」不在の日本では「抵抗の公共性」が必要と書く。

『週刊金曜日』4/22号に「アーティスト・ファイル2011」(国立新美術館)の展評寄稿。「セカイを俯瞰することの断念」から、作家がどう一歩踏み出したか分析。タラ・ドノヴァンは、断片という個を取り巻く現代社会のありようと繊細な建築空間の提示。中井川由季は独特の有機的フォルムで個の重みを伝える。

岡本太郎展(東京国立近代美術館)の展評を、『週刊金曜日』(4月15日)に寄稿。初期、中期、後期と作風変遷を概観し、絵画の実験における収穫を考察。また、岡本太郎の「伝説」化ではなく、同時代の作家との比較検証による「歴史」の視点が必要と強調。同号特集は「原発文化人の罪 」。似顔絵付でけっこうすごい。

『週刊金曜日』4/1号に「田窪恭治展 風景芸術」(東京都現代美術館)の展評を寄稿。古色も目立つ作品は、歴史的な文脈を活かしつつ、その置かれた文脈そのものを再編成する社会実験と分析。企業との提携などさまざまな問題も内包しているので、ドキュメントなどの資料展示もほしかったところ。

『しんぶん赤旗』3/18号に、「VOCA展2011」(上野の森美術館)の展評を寄稿。展覧会がメインに推していた物語性ではなく、絵画以外の要素や視点を取り入れた作品に収穫があったと指摘。目立った作家として、浅倉伸、後藤靖香、横野健一、青山悟、雨宮庸介、パラモデルをあげる。

# by PXP14154 | 2011-05-05 00:19 | 寄稿

寄稿原稿4本

ここ1ヶ月ほど怠っていたブログを更新。展評などの寄稿文章をまとめました。

メディアか自分の資質からか、社会的な題材を持つ表現を批評することが多い。
同様な場合の他の評論を見ると、一様に美学的な分析に終始して社会的な問題になるべく触れようとしていない場合がほとんどだ。輸入された美学か、仮に美術で公共性とうたっていても飼い慣らされた範囲での言説ということがよくわかる。作品の中心テーマにメッセージ性があるなら、そうした読みは逸脱に類するのではないか。

●赤旗(3/2):「ゴヤが見た戦争:版画集『戦争の惨禍』と報道写真」展
4月10日まで(現在休館中) セルバンテス文化センター東京
ゴヤの代表作『戦争の惨禍』はナポレオン軍がスペインに干渉したスペイン独立戦争の戦場を描いた作品。彼の最代表作『1808年5月3日』もこのころを題材にしたもの。侵略軍の非道とともに同国人の残虐の描写を残しているのは、宮廷画家であっても王族に対して批判的な作品を残したゴヤの真骨頂ではないでしょうか。女性には肯定的な筆致なのも彼らしさです。戦場描写から人間の心理を暴く手法は、20世紀のシュルレアリスムの発想の泉ともなりました。

●昭和40年男(2011年春号):1985年のサブカルチャー
「昭和40年男」をターゲットにするという珍しいコンセプトの雑誌ですが(私もその年生まれ)、1985年の風俗のうち、サブカルチャー事情の文・構成を担当しました。
ニューアカから新人類の展開、YMO散開後の細野晴臣の活躍、『聖闘士星矢』と『魁!!男塾』の「週刊少年ジャンプ」登場、インディーズロックブームと『TO-Y』と吉川晃司、『機動戦士Ζガンダム』の登場によるガンダムシリーズ化、深夜放送『ウソップランド』(怪物ランド)の先駆性、ゼビウスなどのゲーム事情、などです。得意なことだけ書いたようですが、ちゃんとしたリサーチの結果です。

●週刊金曜日(3/11):「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」展
3月27日まで 神奈川県立近代美術館 葉山
ナイジェリア在住の、アフリカ作家中もっとも活躍するアーティストの個展。展示は大きく分けて2つあり、削り焦がした木をときに組み合わせたものとアルミのボトルキャップを開いたものを織り上げて巨大なタペストリーにしたもの。いずれも素朴な味わいと原色が使われ、いかにもアフリカテイスト。
しかしその造形は、作家の出身地ガーナとナイジェリアのさまざまな民族意匠を用い、特定のアイデンティティに陥らないよう周到に計算されたもの。ボトルキャップのタペストリーもグローバリゼーションが投影されたもので、のびやかでいてしたたかな戦略が見え隠れする。

●週刊金曜日(3/18):「原口典之・若江漢字」展
4月10日(日)まで 横須賀美術館
1960年代後半にキャリアをスタートさせたアーティストの二人展。いずれも創作は知覚/認識への疑問から出発するが、原口典之は造形の根源へと思考を推し進め、若江漢字は社会制度への批判へと展開させる。
本展は、禁欲的な平面作品を中心に原口の思考のエッセンスと、若江の社会メッセージを表現したインスタレーションと対照的な展示構成。
電気をモチーフに産業文明を批判した、若江の『雷音』などが見応えある。

# by PXP14154 | 2011-03-20 01:12 | 寄稿

2/28・19:00〜みみの会でヤマトのトーク

2/28(月)、19:00〜 四谷地域センターで、みみの会主催により、ヤマトのトークを行います。ぜひご参加いただけますと幸いです。

【転送】第94回みみの会 ご案内

アライ=ヒロユキさんに聞く 共同体再生と歴史と向き合うこと
ー『宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン』

 『宇宙戦艦ヤマト』はそのブームでアニメ大国の礎を作り、先ごろSMAPのキムタク主演映画『SPACE BATTLESHIPヤマト』も公開されるなど、今も不滅の人気を誇ります。このアニメが誕生した70年代前半、高度成長が終わりを告げ、公害問題が表面化しました。人々ははじめて進歩というものに疑問を抱いたのです。
「せまい日本、そんなに急いでどこへ行く」。当時のこの標語はスローライフを思わせ、どこか今の時代と似ています。

 『宇宙戦艦ヤマト』の制作者は、当時リバイバルブームだったSL(蒸気機関車)の持つ無骨な手触り感に人間復権の祈りを読み取りました。そして未来的な流線型ではなく、くろがねの軍艦そのままを宇宙へ飛び立たせたのが、宇宙戦艦ヤマトです。そこには、時代からの脱出と共同体再生への祈りが込められていました。今回のトークでは、上掲書のうち特に込められたテーマを中心に、軍国主義との批判の是非も含め、作品とそれを生んだ時代背景について語りたいと思います。

  講演:アライ=ヒロユキ(美術・文化社会批評)

  関連サイト:
  http://homepage3.nifty.com/isegoria/profile.html
  http://isegoria.exblog.jp/
  http://twitter.com/arai_hiroyuki

 日 時:2月28日(月)午後7時〜午後9時(受付は6時30分より)
 会 費:1,000円
 会 場:四谷地域センター 11F 集会室2
 地 図: http://www2.odn.ne.jp/~hao65350/about.html
 交 通:地下鉄 丸の内線「新宿御苑前」駅より徒歩5分
     都バス 品97新宿駅西口〜品川車庫
    「新宿一丁目」バス停より徒歩1分

【書籍紹介】『宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン』
 著/アライ=ヒロユキ 2300円+税 社会評論社
http://homepage3.nifty.com/isegoria/yamato_70s.html

【本書目次】
序章・時代の危機に、ヤマト復活/第1章・サブカルチャーの誕生/第2章・ヤマ
トの作者は誰?/第3章・大切なコトはみなヤマトから学んだ/第4章・ヤマトは
軍国主義か?/第5章・西暦2199年、過去への旅/第6章・孤独を脱した古代進が
選んだ道/第7章・アニメビジネスの誕生/第8章・続編検証:変節と不変のヤマ
ト魂/第9章・日本人乗組員だけが語れる物語

 会終了後、アライさんをお招きして、近所で懇親会を開きます。
 ぜひご参加ください!

みみの会は、出版関係者を中心とした勉強/交流の会です。
どなたでも参加いただけます。この案内の転送も歓迎します。

お問い合わせは: はる書房 さくま Tel/03-3293-8549
メール: ootomi@mist.ocn.ne.jp
みみの会について: http://d.hatena.ne.jp/miminokai/about

# by PXP14154 | 2011-02-16 12:33 | 活動紹介

赤旗書評:『韓国のやきもの』(2/6)

淡交社で出版された『韓国のやきもの』の書評を赤旗に寄稿しました。本書は姜敬淑の著で、韓国国際交流財団が海外への文化発信のために上梓したものの翻訳になります。内容は、新石器時代から現代までの陶器を豊富な図版と解説で網羅しています。一冊で朝鮮の陶芸の歴史を俯瞰できるものはなかったので、待望の出版と言えます。
朝鮮の陶器には三つのピークがあり、高麗時代(一〇〜一四世紀)の青磁、高麗時代末から朝鮮時代(一四〜二〇世紀)前期にかけての粉青沙器、それ以降の白磁でです。
高麗の青磁は同時代の宋に比べ、明らかに緑みが強調され、本場中国でも翡色と呼ばれ、賞賛されました。
粉青沙器は素朴な図案が特徴。後年の朝鮮民画を思わせ、楽しませてくれます。大衆的という意味で、現代韓国でもっとも愛される存在というのも頷けます。
柳宗悦も愛した白磁は、紛れもなく朝鮮の陶磁の到達点と言っていいでしょう。その清楚な美しさは、儒教の精神性を特化させた朱子学の影響が見られます。
現代韓国でも京畿道世界陶磁ビエンナーレに見られるように陶芸は盛んで、伝統の息吹を感じることができます。
赤旗書評:『韓国のやきもの』(2/6)_f0230237_12314788.jpg


# by PXP14154 | 2011-02-16 12:32 | 寄稿

週刊金曜日寄稿:「日本画」の前衛(1/28)

「週刊金曜日」(1/28)に、「日本画」の前衛(東京国立近代美術館、2月13日まで)の展評を寄稿しました。
日本画は明治期に、欧米の「洋画」に対抗すべく生み出された表現ジャンルです。しかしその定義は曖昧で(日本人か、日本か、岩絵具か、日本的題材か)、常にアイデンティティを模索し続ける宿命を背負っています。
そんな中にあって、あえて伝統を読み替え、前衛表現であることにその存在意義を見いだしていたのが、1930年代末に日本画の革新運動を試みた歴程美術協会です。本展では、交流のあった洋画(靉光や長谷川三郎)、戦後の前衛日本画集団、パンリアルも紹介されます。
分子運動のような動的な構図の山岡良文の《放鳥》、モダンな詩情の田口壮の《季節の停止》、冷静な観察眼とスピリチュアルな感性が同居する《原爆の図》で知られる丸木位里の初期作品が見所です。歴程美術協会はパンリアルに比べ、表現の幅が広く、日本画の鉱脈はまだまだ開拓されていないと実感しました。軍国体制とときに対峙するような緊張感を抱かせる戦時期の山崎隆も見所でした。
東京国立近代美術館

# by PXP14154 | 2011-01-29 23:06 | 寄稿