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美術・文化社会批評/アライ=ヒロユキのブログ


アライ=ヒロユキの美術・文化社会批評などの日々の活動を伝えます。
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表現の不自由展・東京展のコンセプト文1と展示プラン

表現の不自由展・東京展のコンセプト文1と展示プラン

2021年6月25日から7月4日に神楽坂セッションハウスで開催予定だったものの中止となった、表現の不自由展・東京展の展示コンセプト文です。
全体コンセプトを除き、ふたつの展示コーナーをそれぞれ公開します。まず、表現の不自由展・その後 東京EDITION」から。
展示プランも以下に記します。

【表現の不自由展・その後 東京EDITION】

※単純にあいトリ作家の再集結ではなく、当時の展示写真も各所に配置。全体にあいトリの「表現の不自由展・その後」のシミュラクル(ミメーシス)となるようにし、あの展示自体を批評検討する「テクスト」となることも構成意図としました。

[参加作家と作品]
安世鴻《重重ー中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の女性たち》、大浦信行《遠近を抱えて》、大橋藍《アルバイト先の香港式中華料理屋の社長から「オレ、中国のもの食わないから。」と言われて頂いた、厨房で働く香港出身のKさんからのお土産のお菓子》、岡本光博《r#297 表現の自由の机 3》、キム・ソギョン&キム・ウンソン《平和の少女像》、小泉明郎《空気 #17》、嶋田美子《焼かれるべき絵》、白川昌生《追悼碑へのドローイング》、趙延修《償わなければならないこと》、永幡幸司《福島サウンドスケープ》、藤江民《Tami Fujie 1986 work》マネキンフラッシュモブ《参考映像》、九条俳句作家《9条俳句》


表現の不自由展・その後 東京EDITION

2015年の「表現の不自由展」は、日本で深刻化しつつある検閲状況を憂う34人の実行委員の総意と7組の作家の作品の集合体でした。2019年の「表現の不自由展・その後」は、5人の実行委員(アライ=ヒロユキ、岩崎貞明、岡本有佳、小倉利丸、永田浩三)と津田大介芸術監督の合意と16組の作家の作品の集合体でした。
この「その後」は展示の強制中止という理不尽な干渉に遭い、後に展示再開を勝ち得たもののその展示は幾つか制限のあるものでした。
今回は、関東圏で展示を見たいという多くの方の希望に応えるとともに、「その後」の本来の姿をお見せしたいという意図から生まれたものです。展示構成にあたり、「その後」出品作家全員に出品依頼をし、展示スペースの制約などさまざまな点から辞退した方を除いた13組から構成されます。

「その後」をめぐる激しい議論の焦点には、ふたつの定義の問題がありました。ひとつは「中止が検閲か否か」です。私たちは、これが検閲に対する法と社会慣習の定義が日本と諸外国で異なることを明らかにしました。もうひとつは、「あれは芸術か否か」です。
美術史は、美術の定義の塗り替えの歴史と言っても過言ではありません。現代アートの出発点の作家として知られるデュシャンにこんな言葉があります。

誰もが芸術を定義しようとしてきた。あらゆる時代が芸術の定義をそれぞれ知っていた。ということは、あらゆる時代に適応する本質的な定義というものはないことになる。 マルセル・デュシャン

現代アートは冷戦崩壊以降、非西欧地域、非白人、女性、LGBTQ+、負の歴史(ポストコロニアル)の視点を取り入れた潮流が生まれました。これはモチーフの変化などではなく、日々の生活の基底にある「制度」を暴き、社会の変容を表現が意図するものです。デュシャンから始まった「制度」の転覆は、路上やネットの「正義」の主張と呼応し、既に新しいステージに至って久しいのです。
表現の不自由展は、天皇制、植民地主義(強制連行、日本軍「慰安婦」)、あるいは女性差別や福島の放射性物質汚染、ほか政治的主題を持つ検閲された美術作品を展示してきました。これは日本の美術の「定義」を塗り替えようとする行為でもあります。そこに多くの共感と反感が寄せられる「紊乱」さがあるとも言えます。
美術の定義を書き換えるこの「未完のプロジェクト」を、皆さまと共有したいと思います。

表現の不自由展・東京展 実行委員会

表現の不自由展・東京展のコンセプト文1と展示プラン_f0230237_21530122.jpg







by PXP14154 | 2021-07-10 14:20 | 活動紹介
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