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美術・文化社会批評/アライ=ヒロユキのブログ


アライ=ヒロユキの美術・文化社会批評などの日々の活動を伝えます。
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閃光のナイトレイド:戦前の満州で開発された核をめぐって

戦前の上海を舞台に、日本軍の特務機関で超能力部隊が活躍するアニメ。お話は意外にも、軍を離反したアジア主義者・高千穂が秘密裏に開発した核をめぐって満州へと移る。
予言者と呼ばれる存在が未来予知で広島の惨状を透視し、さらに設計図を予知して、核開発を推し進めてしまうのだ。
このアニメでは1話丸々石原莞爾を主人公にした満州事変の経緯をまとめたエピソードもあったが、諸事情ということで放送中止になり、ネット公開された。関東軍の謀略に、反日的な内容では売れないとジャーナリストが加点していくあたりの描写は秀逸だった。
未来を知ることで核を開発してしまうのは、かわぐちかいじの「ジパング」が既に先行している。米軍が国際法に違反して投下した原爆に対抗するかたちで、日本が先に原爆を使用することには賛否両論あった。「ジパング」では戦後の平和主義を知る自衛隊(タイムスリップしているのだ)が、日本軍(の造反部隊)に核を使わせまいと戦いを挑む(筆者はこのアプローチに同意するが)。
『閃光のナイトレイド』太平洋戦争前なので、このあたりのジレンマを解消しているのは、先行例を参考にしたのだろう。高千穂は人種のるつぼである上海に核を投下することで、世界中に核の怖さを実感させて戦争を抑止しようとするのだ。力による抑止力という彼の発想は『ジパング』の草加の行動とあまり変わらない。
それに対し、主人公たちは核を阻止し、未来の核の惨状の幻視をテレパシーで多くの人に伝えることで未来を変えようとする。後世の視点から日本帝国を批判するのではなく、(未来人ではないので)単純に人命を助けるかたちにすり替えており、このあたりもエンターテインメントしてはうまいやり方だろう。ラストシーンは、上海を蹂躙する日本兵の姿で終わったが、なんとなく史実とは違う未来へと移行するのでは?と思わせるところも良かっただろう。
ただし物語構成や演出には、やや難があった。人物描写がフラットだし、サスペンスも盛り上がりには欠けるのだ。おたく第1世代からすると、最近のアニメは色彩設計も含め、淡泊に見えてしまう。テレパシーで、核の脅威を伝えるには、臭いくらい盛り上げてもらわないと。葉加瀬太郎の印象的なヴァイオリンも生かし切れていなかった。
最終回は満州の秘密基地の中でこじんまりと終結した。しかし、実際に上海に核が投下されようとするのをアップテンポのバイオリンBGMをバックに主人公たちが阻止するサスペンス、という大風呂敷の方がスカッとしたと思う。『ボトムズ』の高橋良輔監督くらいの演出力があったらだいぶ違ったのにと思ってしまった。

by PXP14154 | 2010-07-01 15:23
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